研究概要 |
IL-1感受性ヒトメラノーマ細胞株(A375-6)を長期培養することにより得たIL-1耐性クローン(A375-R8,A375-R19)からは構成的にIL-1αが産生し、これがオートクラインに作用しIL-6の産生も恒常的におこなってた。そこで、この耐性クローンのin vivoにおける増殖能を検討し、恒常的に発現しているIL-1α,IL-6がin vivoにおける癌原性や転移能にどのように関与しているかを検討した。まず、接着分子について検討したところ、ICAM-1は感受性株A375-6でも発現がみられたが、両耐性クローンでは強い発現の亢進が見られた。この発現増強はA375-6株のIL-1α強制発現株(A375-6MS)でも見られた。IL-1刺激による発現増強は感受性株では見られたが、耐性クローンでは全く見られなかった。また、耐性クローンでのICAM-1の発現はIL-1レセプターアンタゴニストにより抑制されることから、内因性のIL-1αがオートクラインに作用し、発現の亢進を示しているものと思われる。VLA-4,CD44等、他の細胞接着分子の発現に関しても検討したところ、同様に感受性株に比べ、両耐性クローンでその発現の亢進が見られた。しかし、in vitroでの増殖は耐性クローンの方が感受性株に比べ、約1.3倍速かったにもかかわらず、ヌードマウスでの増殖能は逆に感受性株の方が強かった。マウスメラノーマ細胞株(B16)にヒトIL-1α cDNAをトランスフェクトさせ、得られた安定クローン(B16-MS14,B16-MS16)をC57BL/6マウスに皮内投与したところ、親株(IL-1非産生細胞株)に比べて、顕著な生存日数の延長が認められた。以上のことから、恒常的に産生しているIL-1α,IL-6がin vivoにおける癌原性の低下に深く関与しいるこが示唆され、何らかの宿主介在性の免疫増強作用がIL-1,やIL-6に存在し、致死率の低下が見られたものと思われる。
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