研究概要 |
方法および結果 1.CRK蛋白のSH3領域をGST融合蛋白として、大腸菌で発現させ、それをプローブとしてウエストウエスタンブロッティングを行なう。この際、我々の開発した抗GSTモノクローナル抗体を用いることにより、特異性を高めうる事を発見した。 2.上記の方法により、細胞質中にCRKのSH3領域と結合する蛋白は、分子量130-140,160,180,220kDaの4ないし5個の蛋白である事が明らかとなった。 3.上記の方法を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすることにより、上記の全ての蛋白のcDNAクローニングに成功した。 4.130-140kDa蛋白はRas近縁のGTP結合蛋白の活性化因子であることがわかったので、CRK binding Guanine nucleotide exchanging proteinよりC3Gと命名した。本蛋白の遺伝子は染色体9q34.3に存在する事を見つけた。 5.180kDa蛋白は未知の信号伝達因子で、Downstream factor of CRKよりDOCK180と命名した。核酸配列上も既知の蛋白と有意の相同性が無く、新たなるチロシンキナーゼにより活性化される酵素群の存在が示唆された。 6.Ras活性化因子として知られるSos蛋白もCRKのSH3領域に結合する事が、明らかになった。 考察 本研究によって、二つの非常に重要な癌遺伝子産物であるチロシンキナーゼ群とrasとの間にCRK蛋白が介在することが明かとなり、CRKを含む癌遺伝子産物が増殖刺激伝達系の主要な構成成分であることが判明した。また、幾つかのCRK下流因子が同定されたことにより、CRKを始めとするアダプター分子から、増殖信号が拡散していくことも明らかとなった。今後、これら、ras以外の信号伝達因子が癌化にどの程度関与するのか明らかにしていく予定である。
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