研究概要 |
癌ワクチン療法への試みは既にレトロウイルスベクターを用いて先行しているが、ウイルス力価が低いため、充分量のウイルス溶液の調製は困難であった。一方アデノウイルスベクターは一過性のベクター系ではあるが、高いウイルス力価と広い感染域を有しており、癌ワクチン療法での有用性が示唆されていた。しかし作製法が非効率的で、リンホカインを組み込んだベクターを多種作製し効果を比較する研究には至っていなかった。我々は既に作製法の効率化に成功しているので、本研究では癌細胞で最も強力に発現するプロモーターを検索し、その下流に種々のリンホカインを発現する組換えアデノウイルスを作製することを目的として研究を行った。その結果調べた範囲の癌細胞で、CAGプロモーターが最も強力であることが示された。そこで、CAGプロモーターにより各種リンホカインを発現する、組換えアデノウイルスの作製とウイルスの構造確認を容易にするために、組換えウイルス作製用のコスミドカセットを改変した。新たに作製したコスミドカセットは、CAGプロモーターとPolyAシグナルの間にSwalクローニングサイトを持ち、また作製後の構造確認を容易とするためにXhoIとClaIサイトが新たに挿入されている。この組換えアデノウイルス作製用コスミドカセットを用いて、共同研究も含めマウスIL2,IL4,IL7,IL10,IL12(p23,p40),GM-CSF,λ-IFN及びヒトIL2,TNF-α,GM-CSF,IL6,IL6受容体,gp130の14種類のリンホカインを作製した。組換えアデノウイルスは、増殖を止めた細胞への遺伝子導入が可能であるため、今後は安全面からもより実用性のある放射線照射後の細胞を用いて、組換えアデノウイルスの導入効率と癌ワクチンとしての効果の検討へと発展する。また癌特異的プロモーターを組換えアデノウイルスの系に応用する等の要求性が高いため、発現単位を直接組み込むことが容易なコスミドカセットの作製を行っていく。
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