研究概要 |
放射線療法では、個々の癌の放射線感受性および増殖速度などを予測し最適な放射線治療方法を決定することが重要となってきている.この予測法として微小核形成試験法,および未成熟染色体凝集法に蛍光in situ hybridizationを併用する二方法を開発した.さらにこれらに加え癌関連遺伝子の発現をも考慮し,腫瘍の放射線感受性に対するより有効なpredictive assay法を確立するための基礎的研究を行なった. 1.微小核形成試験:肺癌について生検あるいは手術中に得られた検体を用い,微小核形成試験により分裂細胞の比率(DF)を求めた.また腫瘍の潜在的倍加時間(Tpot)を推定し,さらに二核細胞における微小核発生頻度(MN/BNC)からその細胞の放射線感受性を推定した。腺癌,雇平上皮癌および大細胞癌の各組織型間にDF,TpotおよびMN/BNCの平均値に有意差を認めなかったが,同一の病理組織型でも個々の腫瘍間の差が大きく放射線感受性予測法として有用と考えられた.基礎的研究として細胞のプロイデテイの差とNM/BNCの出現頻度ついて検討し,DNA含有量で補正することによりより精度の高い放射線感受性予測が可能と考えられた. 2.未成熟染色体凝集法:2倍体および2倍体に近い細胞の放射線照射後の間期染色体障害と細胞生存率に強い相関を認めた.しかし,手術標本では細胞の収率が低く十分量の未成熟染色体凝集を誘導できた症例が少なく今後の検討が必要と考えられた. 3.癌関連遺伝子の発現:放射線感受性の異なる細胞についてP53,Gadd45についてmRNAレベル,蛋白レベルでその発現を調べた.P53は,mRNAレベルでは放射線感受性の低い細胞で発現の増大が認められたが,蛋白レベルでは差を認めなかった.Gadd45については,低感受性細胞で放射線照射によりmRNAレベルで発現の増加が認められた.癌関連遺伝子の発現から腫瘍放射線感受性を求める研究は、途についたばかりであり今後の成果が期待された.
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