研究概要 |
Hsp70からATP依存性に遊離してきたペプチドのプールシークエンスの結果はN末1番目のアミノ酸はIle,Leu,Valの分岐鎖アミノ酸、及びAla,Pheの頻度も高くこれらのアミノ酸の量を合計すると全体の80%くらいを占める。2番目にはAsn,Asp,Glu,Gln,Lys,Ser,Thrなどの親水性のアミノ酸が位置する。Gly、Proは2ないし3番目から7番目くらいに高頻度に認められた。この結果は4回おこなったいいずれの実験でも同様であった。ER内にあるgp96からTFA処理にて得られたペプチドのプールシークエンスからもほぼ同様の結果が得られた。このことはhsp70及びgp96のペプチド結合部位の構造が類似である可能性を示唆する。 さらにhsp70から遊離してきたペプチドをC18逆相カラムにより分離し一部のペプチドピークをエドマン分解法にてそのアミノ酸配列を決定した。これまでにRas蛋白、hsp84、Annexin、Laminin、などに由来する約15本のペプチドのアミノ酸配列が決まったがそのほとんどは内因性由来の蛋白分子からきている。またタンデム質量分析器を用いてペプチドの分子量をみたところ約800から2000の範囲に多くのペプチドが観察された。Hsp70については従来からクラスIIの抗原提示に関与していることが言われてきたが、これらペプチドの解析の結果からクラスI及びクラスII両方の経路に関与している可能性が考えられる。さらに小胞体にあるgp96,Bipの結合ペプチドの構造決定が必要である。これらの結果をもとに、ストレス蛋白に結合している腫瘍抗原ペプチドの検出を行なうことも検討中である。
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