研究概要 |
現在臨床応用されているBPAに,我々の新規開発した水溶性部位,枝分かれ型ポリグリセロールを結合させ,新しい誘導体を合成した。合成はBPAのカルボン酸末端とベンジルエーテルで保護された枝分かれ型ポリグリセロールの結合部位をアミノ基に変換した化合物の縮合反応でアミド結合として行い、その後に脱保護反応を行う経路による。水溶性部位により付加される水酸基の数により,BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4と名付けた。得られた3つの化合物BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4とBPAそれ自体の4つの化合物をB16メラノーマ細胞を癌細胞モデル,TIG-1-20ヒト乳児肺細胞を正常細胞モデルとして細胞増殖抑制機能やホウ素取り込み量を測定した。 細胞増殖抑制機能はBPA,BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4の順に弱くなり,水溶性の増加に伴い,毒性が弱まる傾向を示した。致死機能は中性子照射で行うのであるからこうした変化は望ましい方向といえるし,正常細胞モデル側でも同様であった事はことさらである。 癌細胞へのホウ素取り込み量の値はBPA,BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4の順に低下したが、その差はわずかであった。正常細胞においてもBPA,BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4の順に低下するが,これは望ましい変化である。 重要なのは,癌/正常細胞取り込み率であり,これが癌細胞だけを選択的に致死させ正常細胞は無事にしておけるという中性子捕捉療法の利点をさらに向上する事になる。上記の2つの場合の取り込み値を除すると,BPA,BPA-(OH)1,BPA-(OH)2,BPA-(OH)4に上昇する。BPA-(OH)4ではBPAの実に3倍近い値となった。
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