研究分担者 |
田辺 三千広 名古屋明徳女子短大, 国際文化学科, 講師 (70259357)
坂内 徳明 一橋大学, 言語社会研究科, 教授 (00126369)
安村 仁志 中京大学, 教養部, 教授 (30065247)
栗生沢 猛夫 北海道大学, 文学部, 教授 (40111190)
松木 栄三 静岡大学, 人文学部, 教授 (50008033)
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配分額 *注記 |
6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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研究概要 |
本研究が具体的作業として研究目的の中であげたのは,1.16世紀の文献「ストグラフ(百章令)」の読解,2.17世紀の文献であるG.コトシ-ヒン著「アレクセイ帝治下のロシアについて」の読解と注釈,ならびに訳の作成,3.宗教異端としてのロシア旧教・古儀式派の著作テクストの文献収集・整理と読解,の3点であった。平成6年度に開始された本研究では,すでに上記の1がほぼ終了して,中心は,2.コトシ-ヒン・テクストの読解の作業に置かれた。その際,すぐれた言語学的テクストロジーと校訂によって知られるA.ペニングトン版のテクスト(1980年,Oxford UP)に依拠し,アメリカでドクター論文として刊行された英訳も参照しながら,丹念にテクストを読解した。さらに,日本語訳を作成し,メンバーが相互にこれを点検し,一応の完成訳をまとめて,研究分担者の松木が代表して発表してきた。ここには,われわれの定例研究会の成果である17世紀半ばの時代考証を中心とした詳細なコメンタリーの付されている。 コトシ-ヒンのテクストが,17世紀半ばのアレクセイ帝を中心としたロシアの一大転換期を知る上で基本的な資料であることはこれまでにも指摘されてきたことだが,その具体的意味については十分に考察されてこなかったし,この問題を,当時発生した宗教異端をはじめとする宗教的・民族的習俗のレベルでとらえることは,これまでまったくなされなかった。その意味でわれわれの作業は,アレクセイ帝の時代のロシア宮廷内部の詳細な記述であるコトシ-ヒンのテクストが宮廷内の習俗のみならず,広くロシア社会全体の習俗文化を知る第一級の資料であることを明らかにしたものである。さらに,このテクストを同時代のヨーロッパ人の旅行記によるロシア社会の記述と比較・対照することで,近代以前の社会の諸相を多面的に認識する方法の一つの事例を呈示しえたと考えている。 また,ロシア本国から訪日されたロシア科学アカデミー会員のV.L.ヤニン氏,ルイビナ氏には,我々研究会の場にも足を運んでもらい,今なおノヴゴロドにおいて発掘されている白樺文書に関する興味深いレポートをしていただいた。これも,中世ロシアの社会の諸相に光をあてる方法的・資料的視点を示唆するものとして大きな成果となった。
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