研究概要 |
本研究は、障害児の音声言語発達を感覚フィードバックとの関係で検討することを目的に、3年計画で進められたものであり、以下のような成果を得ることができた。 永渕の研究結果:1)頭部外傷性小児失語(小学1年,女児)で,聴覚と視覚(文字)による言語訓練の効果(日常会話レベルまでは容易に回復)と限界(読み書きの発達遅滞)が分かり,今後の教育の問題点を提起することができた。2)幾何図形,特に菱形,の模写が拙劣な知的障害児(小学6年,男児)に,視覚と触覚を用いた描画訓練で成功し,軸木活用の有効性が確認できた。さらに,描画訓練によって書字指導が可能になることが判明した。3)健常乳児(3カ月齢,10例)の音声分化において,聴覚と視覚のフィードバック,すなわち母子間の音声相互作用のメカニズムをある程度明らかにすることができた。健常児のパターンが明確になれば,障害児の早期発見が可能になる。 菅井の研究結果:1)言語発達遅滞児研究のうち,(1)コミュニケーション関係が成立する過程と音声言語情報処理機能の学習過程を取り上げた事例および(2)動作系と音声系の言語発達の対応関係の追跡調査から,コミュニケーションの成立度と音声情報処理機能の学習度が言語発達の要因であることを明らかにした。 2)初期音声言語の習得に関する文献研究で,従来の研究成果を理論的な面から検討し,今後の研究の視点を示した。3)言語発達指導における音楽と言語の関係,さらに音楽を利用して諸感覚フィードバックによる言語発達過程を示し,その指導理論と指導技法を提唱することができ,今後の教育に大きく貢献できる確信を得た。
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