配分額 *注記 |
30,100千円 (直接経費: 30,100千円)
1996年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
1994年度: 24,300千円 (直接経費: 24,300千円)
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研究概要 |
本研究は,熱プラズマアークにおける「電極で生じる特有の現象」を明確にするために,プラズマと陽極の間の熱・物質輸送について実験計測を行ない,理論的数値解析と比較することによって,プラズマ-電極系の物理を明らかにすることを目的としたものである.具体的には,プローブ法,発光分光分析法,カロリメトリック法,レーザ散乱法を用いてアーク・陽極境界層を観察し,それぞれの方法で得られた結果を総合してアークプラズマ・陽極境界層の物理構造を推察した. 低電流アークの場合,プローブ計測の結果から境界層において電子温度が上昇し,正の陽極降下が生じることが示された.レーザ散乱計測の結果から境界層ではアルゴンの原子温度が減少し,電子温度と原子温度が大きく食い違うことが明らかにされた.一方,高電流アークの場合,プローブ計測の結果から境界層において電子温度はほとんど変化しないことが明らかにされ,負の陽極降下が存在することが示された.レーザ散乱計測の結果から境界層においてアルゴンの電子温度はほとんど変化せず,電子温度と原子温度がほぼ等しいことが明らかにされた.また,陽極入熱測定の結果から,低電流アークでは陽極近傍のアルゴン原子温度が低く,逆に高電流アークでは陽極近傍のアルゴン原子温度が高いことが示唆され,陽極入熱測定の結果からも上述の低電流アークの陽極領域における非平衡性と高電流アークの陽極領域におけるLTE(局所熱平衡)保持の結論が支持された. 以上のことを考慮すると,アーク電流が低い場合は,アルゴンの原子温度が低いために陽極近傍の正の陽極降下電圧によって加速された電子の衝突電離が生じることで放電が維持され,この結果,アーク・陽極境界層において非平衡状態が形成されると推察された.一方,アーク電流が高い場合は,原子温度が比較的に高いために熱電離によって放電が維持され,その結果,境界層においてLTEに近い状態が保持されると推察された. 以上,本研究では,陽極近傍のガスの温度がアーク・陽極境界層の形態を決定し,そのガスの温度はアークの電流値(電流密度)によって決定されていることを結論づけた.
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