研究概要 |
既存断層面をもつ岩石試料を用いて固着-すべり(スティック・スリップ)を発生せしめ,それによって励起される高周波弾性波動を断層至近距離で測定し,解析した.得られた主な結果は:1)断層至近距離における高周波強震動継続時間は、局所的破壊時間に比例する.2)実験で得られた最大すべり加速度は数十km/s^2という,きわめて大きな値であるが,周波数の違いおよび規模の違いを考慮すると,地震の場合の1000gal程度に相当する.3)地震の場合の上限周波数は,破壊伝播速度を破損信行領域の長さで除した値にほぼ等しいとう理論があるが,実験の場合にはこの予測よりはるかに高い周波数の強震動が測定される.岩石試料のすべり運動を以下のようにモデル化した.すなわち,円形状のアスペリティを断層面上に分布させ,巨視的な破壊のフロントが通過した後にこれらが確率的に破壊する.ここで「確率的」とは,フンロト通過からアスペリティの破壊までの時間がある確率密度分布に従う,という意味である.このモデルにより,測定された強震動の特徴をよく再現する理論波形が得られた. 結果は,既存断層で発生する不安定すべりに伴う高周波震動が断層面上のアスペリティの脆性破壊に起因することを意味する。これが正しければ,断層面上で安定すべりが発生するときにも,アスペリティの脆性破壊による微小破壊振動が観測されるはずである.このことを検証する目的で,安定すべりに伴って発生する微小破壊振動の実験を行った.その結果,断層面上に震源をもち,アスペリティの脆性破壊によるものと考えられる微小破壊振動が確かに観測された.巨視的すべり速度の増大とともに,1)単位すべり量当たりの微小破壊の発生数は減少し,2)微小破壊の規模の平均値は減少した.これらはともに,巨視的すべり速度の増大によりアスペリティの強度回復のための時間が減少するためと考えられる。
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