配分額 *注記 |
33,000千円 (直接経費: 33,000千円)
1996年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1995年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1994年度: 26,800千円 (直接経費: 26,800千円)
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研究概要 |
本研究の主な目的は,3配位カルボアニオンと等電子的3配位ホウ素ジアニオンを発生させ,その反応性を調べるとともに新規な有機ホウ素化合物を合成し,それらを有機合成に利用することである。この目的を遂行するために,まず最初に3配位カルボアニオンを発生することを試みた。その結果,トリアルキルホスフィン・モノヨードボランに芳香族ラジカルアニオンを作用させると目的の化学種が発生することを発見した。この化学種は有機リチウム化合物やグリニャ-ル試薬のようなカルボアニオン種と類似の反応性を示すことが明らかとなった。すなわち,ハロゲン化アルキルやカルボニル化合物などのような親電子試剤に対し,ホウ素原子が求核的に反応することが見いだされた。また,その塩基性はカルボアニオンよりも強いことと,容易にシグマトロピーを起こすことも明らかとなった。これらの反応を利用し,ホウ素原子上にアルコキシメチル基,メルカプト基,カルボキシル基等の官能基をもつ多くの有機ホウ素化合物を合成することができた。この方法は有機ホウ素化合物を合成する一つの手法であり,従来の手法では得ることが不可能もしくは著しく困難である化合物の合成にも適用できる。 一方,ab initio分子軌道計算を行い,3配位ホウ素アニオンがカルボアニオンよりも著しく不安定な化学種であることを理論的に裏付けた。 これらの研究成果を踏まえ,ホウ素原子上にトリフラート基をもつホスフィン・ボランを合成し,それらの分子構造を単結晶X線回折によって明らかにした。また,求核試剤との反応についても検討し,求核的ホウ素-炭素結合形成反応などを前例のない反応を見いだすことができた。 3配位ホウ素ジアニオンはあまりにも反応性に富んでいるために,未だその単離には成功していない。しかしながら,単離を目指した研究により,P-B-S結合連鎖をもつ新規な複素環化合物を合成することができた。
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