研究概要 |
植物の生体防御に関してSODなどの酸素的観点からの研究が多くなされているが,本研究の特徴である非酵素的ラジカル反応については全く皆無である。ラジカルの測定はこれまで高額なESRでのみ可能であったが,ごく最近ペルオキシドラジカルによる微弱発光の検出が可能となり,しかも蛍光増幅物質を加えることなくその物質の本来の微弱発光検出法を確認することができた。天然ラジカルスカベンジャー標準物質(没食子酸,フラボン類,アントシアン類およびカテチン類)を用いて検討した結果,本研究で発見したX(活性酸素種),Y(触媒種)およびZ(受容種)存在下における微弱発光系は三次反応で,活性酸素種がかかわる最も基本的ルールであり,これまでその機構が不明である生体における防御,疫病,酸素反応などを解明する手掛りとなることがわかった。また,この系のYとZ成分,特にZ成分の発見は重要な知見である。大豆のDDMPサポニンとアセトアルデヒドは典型的なZ成分で,酸化促進剤であるが,抗酸化性を示すYとの組み合わせによりその抗酸化性を著しく促進する。しかもDDMP部位は2価の鉄イオンと特異的に黒褐変呈色することから,その存在部位は発芽と維管束であることを特定することができた。ハナマメとフジマメの胚軸部位からそれぞれ新規DDMPサポニンを単離して構造を決め,soyasaponin αa, lablab saponin Iと命名した。また,VIMカメラの活用により微弱発光をTLC上で直接観察することに成功し,発光特性の解析と新規識別法の開発が期待される。
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