研究概要 |
植物二次代謝産物の動態や生態化学的機能の解析を中心課題とする本研究の範囲は,極めて多岐に渡る.この三年間に進めてきた研究の成果は,学会誌等に印刷された論文56報,印刷中3報,投稿中2報合計61報,著書2,口頭発表83件として公にされてきた.その成果は,以下のようにまとめられる. 1)生理活性天然物の精密構造解析のための新しいNMR技術の開発とその応用に関する研究(7報),生体内アミンやカルシウムの動態の追究とその分析法の確立(4報). 2)植物二次代謝産物の構造解析,ヒアシンス,リンドウ,バレイショのアントシアン系色素の定性,定量分析(8報),ポリフェノールやテルペノイドの構造解析(5報). 3)植物二次代謝産物のα-glucosidase阻害作用や抗酸化作用について,作用物質の構造,構造と活性の相関,作用様式の解析(5報). 4)植物の防御物質について,アレロパシー活性物質(4報),殺虫あるいは摂食阻害物質(6報,著書1),抗菌物質とその生成機構(6報),バラ科植物の防御物質(2報,著書1). 5)植物の防御物質として広範な機能を有するフラボノイドの構造解析,生成や代謝,機能の追究を行い(6報),プレニル化イソフラボノイドとその周辺について総説を取りまとめた. 6)生態系における植物と微生物の相互作用の重要性に注目し,ホウレンソウ根腐れ病菌のライフサイクル制御物質や,が外生菌根菌の機能,葉面微生物の植物成分を介した機能発現について新しい研究展開を図ってきた(3報). これらの多くの研究成果の位置付けあるいは研究意図,研究経緯等については,著書(分担執筆2),総説(4件)に示されている.持続的な共存を前提とする生態系の動的平衡状態の維持機構に,独立栄養生物である植物の構造的あるいは機能的に多様な生理活性二次代謝産物(プラント・エコケミカルズ)が果たしている役割の重要性が具体的に見えてきつつある.
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