研究概要 |
本研究では,ハイブリッド的説明を用いるBassの理論-変革的リーダーシップ・交換的リーダーシップ-に立脚して,第一に,混迷する現代の産業場面で有効となりうるリーダー特性を明らかにすることを,第二に,リーダーとメンバー間の相互影響関係を明らかにし,有効なリーダー行動とは何かを検討していくことを,目的とした. 予備調査の結果に基づき作成されたハイブリッド・リーダーシップモデル質問票は,管理者用-自己評定質問票(113質問項目)と部下用-他者評定質問票(112質問項目)の2種類であった.首都圏にある3企業に勤務する管理者(課長クラス・134名)とその直属の部下(1108名)を対象に調査を実施した. 管理者の自己評定から得られたデータの因子分析の結果,ハイブリッド・リーダーシップモデルの因子として,I「知的・意欲喚起リーダー行動」・II「非カリスマ的自己理解」・III「報酬的交換行動」・IV「部下否定的行動」・V「部下個性無視行動」の5因子が抽出された.すなわち,これまでの研究では明らかでなかった,管理者のリーダー行動に影響を与える自己理解因子および部下理解因子が抽出された. 部下による他者評定から得られたデータの因子分析の結果,I「カリスマ的リーダーシップ」・II「部下評価」・III「知的喚起・目標設定」・IV「保守的管理」・V「部下の自己犠牲的実力発揮行動」の5因子が抽出された.これらの因子と部下のモラールとの因果関係をパス解析を適用して分析を行った.その結果,「カリスマ的リーダーシップ」因子は,部下のモラールに直接的に影響を及ばさずに,管理者の他のリーダーシップ行動を通じて,間接的に部下のモラールを左右するということが明らかになった.また,カリスマ性をもつ管理者は部下のストレス=モラールを和らげ,しかも,部下のストレス=モラールがより高い販売企業において,この効果が著しいことが明らかになった.
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