研究概要 |
本研究の目的は,ヨーロッパ近世都市の生成過程とその諸特徴を明かにするところにある。何故なら,これまでの都市の歴史的研究は中世都市にのみ集中し,近代都市については無視してきたからである。そうした目的のため,さし当って本研究は現代ドイツ有数の大都市であるベルリンとミュンヘンをとりあげ,考察の対象とした。 ベルリン,ミュンヘンともその起源を12/13世紀に遡るが,ともに市場町として発達し,商人,手工業者の急速な台頭がみられた。14世紀には相当な市民自治体制が形成され,とくにミュンヘンの場合,塩商人を中心とする市民自治が後世まで強く保持された。しかし,15世紀に入ると,領邦国家支配が強化され,領邦君主が両市政に介入し,ついにこれらを領邦都市へと転換させた。これ以後は国家による都市統制が貫徹されるが,とくにベルリンでは,18世紀プロイセン王国の成立とともに,増大する官僚層と軍隊,それらに補給を行う織物マニュファクチュアの出現によって,市街の様相,市民の生活様式は近代的それへと一変した。宮延や中央官庁の群集によって,都市に重厚な景観が与えられた点は,両都市とも共通している。 このいわばベルリン型,ミュンヘン型ともいうべき近世都市の成長コースの型を他の近世領邦国家首府に当てはめてみると,ザクセン選帝候国のドレスデン,ヘッセン・カッセル方伯領のカッセルは前者に,ハノ-ヴァー選帝候国のハノ-ヴァー,ヴュルテンベルク大公国の首府シュトゥットガルトなどは後者に分類できる。それらはいずれも中性都市から近・現代都市への変貌過程を見事に示しているのである。
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