研究課題/領域番号 |
06451106
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済政策(含経済事情)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 新介 (1996) 大阪大学, 社会経済研究所, 助教授 (70184421)
小野 善康 (1994-1995) 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70130763)
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研究分担者 |
小野 善康 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (70130763)
吉田 あつし 大阪府立大学, 経済学部, 助教授 (60240272)
池田 新介 大阪大学, 社会経済研究所, 助教授 (70184421)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1996年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1995年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 流動性選好 / スタグネーション / 時間選好 / 財政政策 / 貿易政策 / 累積債務 / 非定常均衡 / 為替レート / ノンパラメトリック法 / PSID / 不況 / バブル / スピル・オーバー効果 / 一般化モメント法 |
研究概要 |
本研究では、1.小野の不況理論(非飽和流動性理論)の応用・発展、2.非飽和流動性理論の実証解析、3.累積債務の理論解析、4.産業政策と経済厚生について、それぞれ以下の実績を得た。 1.非飽和流動性選好の理論に基づいて、次の知見が得られた(小野担当)。(1)資産保有選好が非飽和的である場合、家計主体の最適化行動から永続的な資産インフレーション(バブル)が説明できる。こうしたバブルを押さえる政策としていくつかの財政政策が考えられるが、必ずしもそれらが経済厚生上有益であるとは限らない。(2)労働市場を明示的に導入し、慢性的失業の発生メカニズムとその方策について研究した(著書『金融』)。その結果、伝統的な総需要-総供給分析に代わるインフレー総供給分析という新手法を開発し、それを応用することによってフィリップス曲線に新たな動学的基礎を与えた(『経済研究』所収の2論文)。(3)2国開放経済における不況の発生や物価、実物資産蓄積、為替レートの非定常時間経路を説明し、次の結論を導いた。(i)両国で流動性選好が非飽和的であるとき、定常的完全均衡は存在しない。(ii)有効需要が慢性的に不足するような不況均衡(スタグネーション均衡)が世界(2国)全体に生じるのか、1国だけに生じるのかは各国の非貨幣資産保有の相対的な大きさに依存する。とくに1国だけが突出して裕福である場合、その国は深刻なスタグネーションに見舞われる。 2.小野の不況理論の前提になっている「非飽和流動性選好」が現実妥当性を持つか否かをアメリカのデータを用いて実証的に検証し、肯定的な結論を得た(小野・吉田担当)。具体的なは、1987年度のPSIDデータから高額所得者1000組のクロスセクション・データを作り、そこから推定される流動性と消費の関係が「流動性選好に下限がある」との帰無仮説を棄却するかどうかをノンパラメトリック法を用いて調べた。その結果、帰無仮説は棄却され、「非飽和流動性選好」仮説が実証的に支持できることが明らかになった。(小野。吉田論文)。 3.時間選好率の国際間差異によって対外累積債務が生じるような理論モデルを構築し、対外不均衡を是正する政策-貯蓄管理政策(資産課税など)、貿易政策(輸入割当、輸出自主規制)、財政政策-が各国の対外不均衡と厚生水準にどのような効果をもたらすかを分析した(小野・池田担当)。その結果、以下の知見が得られた。(1)これらの対外収支の不均衡是正策は必ずしも厚生上好ましくない。(2)債務国の輸入割当や債権国の輸出自主規制には最適水準が存在し、それらはマイナスの値(輸出促進、輸入促進)をとり得る(Ono and Ikeda [1996]. Kluwer)。(3)財政政策の効果は課税方法、たとえば人頭税と消費税のどちらで徴収するか-に依存する。財政支出を一定に固定しなければならない場合には、消費税は海外にスピル・オーバー効果をもたらさない代わりに、国内に経済的歪みをもたらす(Ono and Ikeda [1996]. J. E.)。(4)2財が存在する場合、財政政策および株式の相対価格を変化させるので、株式の保有が2国間でどのように分布するかによって財政政策の各国厚生水準に対する効果が異なってくる。含意として、財政支出が直接効用を生み出さない場合でも、財政支出を増やすことによって、自国の保有株式の価値を増加させ経済厚生を高めることがあること、しかしながらそれは必ず近隣窮乏化的であること、という2点を明らかにした。 4.上述のマクロの側面に加え、各国による経済政策の国際的波及効果のミクロ的側面として、不完全競争的な状況における市場開放や企業参入規則、研究開発補助金などの効果についても分析した。その結果、(1)企業が皆同じ効率性を持っていれば不完全競争の場合にも貿易を通しての市場開放は一般に経済厚生を引き上げるが(Lahiri and Ono [1995]. I. E. R.)、(2)企業の効率性が違っていれば、強い企業を戦略的に優遇することが、経済全体から見ても望ましい場合もあることがわかった(Lahiri and Ono [1995]. kluwer. J. E. R.)。
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