研究概要 |
本研究の成果を概括すると,次のようになる。 (1)環境教育は,教員養成にかかわる必修科目ではないにもかかわらず,わが国の各教員養成系大学・学部のほとんどで実施されており,関係者がその必要性について高い意識をもっていることがうかがわれる。 (2)環境教育の担当者,内容の量や質等は多種多様であり,各大学によってその実施状況は全く異なっている。 (3)わが国の教員養成系大学・学部に適した環境教育カリキュラムについては,体系的に環境教育を実施している大学の事例の中に,参考となるプランがいくつか散見された。 また,本研究において開発したカリキュラム(試案)は,本学部が小・中学校教員養成を主たる目的としていることから,学部学生に小・中学校の児童・生徒に環境教育を指導する際の理論的基礎を作ることを主要なねらいとし,次の内容によって構成した。 ア)わが国における環境教育の歴史的背景 イ)諸外国における環境教育 ウ)児童・生徒の発達 エ)環境教育の目標 オ)環境教育の内容構成の考え方 カ)環境教育カリキャラムの具体的目標及び内容 なお,このカリキュラム(試案)は,研究者(奥井)と大学院生(三木)の共同研究の成果であり,特に「カ)環境教育カリキュラムの具体的目標及び内容」は,わが国の小・中学校向けに新しく独自に開発したものである。 (4)事例研究「小学校理科における環境教育と酸性雨の指導」は,研究者(小堀)と学部学生(倭文)の共同研究によるもので,理科の学習と環境教育の必要性との関連について研究し,環境学習のための映像資料も開発している。 (5)事例研究「地震学の基礎と栃木県の地震活動」は,研究者(伊東)の専門的見地から地震の起こる機構と栃木県の状況について研究したものであるが,広い意味の環境教育に「防災」が含まれることから,本研究の内容に取り上げた。 (6)アメリカの大学における環境教育については,共同研究者の一人(人見)がハワイ大学に留学したので,そこで収集した教育資料と実際の学習体験を基にして考察を試みた。ハワイ大学におけるこのカリキュラムは,教育学部・同大学院向けのもので,理科・社会科専攻者が選択履修することになっている。内容は,湿地の生態,海洋汚染,公害,人口など環境に関連するテーマを取り上げ,基本的な講義に加えて,実際のフィールドワークに基づくデータの収集活動が重視されている。その後,データの整理の活動が加わるが,データはパーソナルコンピュータを用いて,インターネットのホームページに記述することになっている。成果の発表もホームページに表したデータやグラフなどを活用して行っている。
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