研究概要 |
トリル処理した光合成光化学系II粒子でトラップしたチロシンZ^+のEPR線形が低いpHで変化することをパルスENDORで詳細に調べ,チロシンZ^+が陽イオンラジカルであることを確認した.このラジカルは水から反応中心P680^+への電子移動の中間体で,他のアミノ酸残基との水素結合が重要な役割を演じており,その効果を微視的に調べるのにパルスENDSORが最も有効であることを示した.このようにチロシンZの反応性は先にマトリックスENDORで明らかにした周辺構造の柔軟性だけでなく,電子状態においても特異な構造をとることが解った.また,線形のpH変化よりヒスチジンとチロシンZの結合が推論できた. 受容体側にあってキノンを結合している非ヘム鉄を抜き,鉄を亜鉛置換した試料について窒素のESEEMを観測して,キノンの電子伝達に関与する可能性が考えられるアミノ酸残基としてヒヌチジンと他の一個のアミノ酸残基を確定した.シアン(CN)処理の結果,鉄が反磁性となるほかにキノンに結合したヒスチジンの窒素が結合サイトから消失するなどの構造変化が見いだされた.陽子パルスENDORを観測し,バッファーを重水置換した試料の結果と比較してQ_A周辺の交換可能な水素を確定した.シアン処理はこれらの水素結合位置にも構造変化をもたらすことを明らかにした. 新しい二重共鳴の方法として異なる共鳴周波数を持つラジカルまたは常磁性金属イオンに同時にパルスEPR(ELDOR)を行って,これらの電子伝達担体間の距離を双極子相互作用の大きさから見積もる方法を完成させ,Caを水分解系から除去した試料に使用して,S_3状態のラジカルとチロシンD,またS_1状態でトラップしたチロシンZ^+とD,水分解系マンガンとDの距離をそれぞれ30,29,27Aと決定出来た.
|