研究概要 |
本研究では,プラズマ励起に代わる新しいZnSeへの窒素ド-ピング法として遷移金属の触媒効果を用いた窒素ド-ピング法を提案した。 まず,高温に加熱したW-フィラメントの効果を明らかにするために,フィラメントを加熱して(Tw=1500℃)窒素を供給した場合,フィラメントを加熱せずに窒素を供給した場合,窒素を供給せずにフィラメントを加熱した場合をアンドープのZnSe薄膜と比較した.その結果,4.2Kにおけるフォトルミネッセンス(PL)測定において,フィラメントを加熱して窒素を供給した場合にのみ,ドナー・アクセプタペア(DAP)発光が観測された.このことから,フィラメントを加熱することで窒素が効率よくZnSeに取り込まれることがわかった.また,W-フィラメントの温度依存性を検討した結果,W-フィラメントの温度が高いほど,窒素が多く取り込まれていることがPL測定より明らかになった.しかし,いずれのNドープZnSe薄膜も高抵抗であった.これらの原因を明らかにするために,X線回折法により評価を行った.その結果,窒素ド-ピングを行ったZnSe薄膜の格子定数が通常の格子定数より大きくなっていることが明らかになった.プラズマ励起窒素を用いてド-ピングした場合には格子定数が小さくなることが知られている。このことから,W-フィラメントを用いて窒素ド-ピングを行った場合には窒素が格子間位置に入り,その結果としてN-ドープZnSe薄膜が高抵抗となると考えられる. 次に300℃程度に加熱した鉄触媒の効果を検討した。PLスペクトルにおいて、300℃に加熱して窒素を導入した場合には、加熱しなかった場合に見られた中性アクセプタ束縛励起子発光が消滅し、DAP発光のみが観測された。このことから、加熱した鉄の効果により窒素の取り込みが増加したものと考えられる。しかし、この場合にも得られた試料は高抵抗を示した。
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