研究概要 |
本研究は,清浄な半導体表面とその上に形成された金属膜との界面で起こりうる種々の現象に,イオンやラジカル粒子がおよぼす影響とその効果を見出すことが目的である。 実験では基板に通常の半導体的表面処理を行ったSi(100)面(2×1構造)を用いた。金属膜にはAuを高周波イオンプレーティング法(RFIP法)を用いて成膜した。比較のために真空蒸着法(VD法)にても成膜した。これらの排気系はすべてオイルフリーとし,Auの蒸発には電子ビーム,Wフィラメントの両方を利用した。まず,In-Situ観察の前に通常のRFIP法とVD法による膜形成を行い,STMによる観察を行った。VD法に比べてRFIP法により形成されたAu膜は全体的に平滑な表面を形成しておりピンホールやボイドは存在しないことがわかった。またSi基板とAu膜の電気的コンタクト抵抗を測定し,この特性からもRFIP法により形成された膜の方がコンタクト抵抗率が低いことが明らかになった。VD法に比べRFIP法による成膜の方が粒子密度が高く格子欠陥が少ない膜が形成されていると考えられる。 次にSTMIn-Situ観察による実験を行った。その結果,RFIP法によるAu膜の膜厚制御が困難なために目標とした膜厚より大きく可変してしまうことが明らかとなった。しかし代表的なサンプルによる観察結果から,Si(100)2×1構造上に100(Å)程度のAuグレインが基板面全体に成長しているのが判明した。VD法ではSi(100)面上の(100)方向の原子列上にAu原子が配列し,Auの被覆量が3層を超えると,Si-Au界面反応が開始するために界面が非晶質化する。RFIP法により成膜された界面ではAu-Si界面反応が起こらないことから,被覆量が3層を超えてもAu原子は規則的な配列で成長していくと思われる。目下膜厚のごく薄い状況下での実験に取り組んでいる。
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