研究概要 |
ボールねじのねじ溝の仕上げには通常は総形研削が用いられ,砥石をねじ溝形状に合わせて総形ドレッシングする必要がある.砥石をこのゴシックアーチ状に仕上げるためには複雑な総形ドレッシング過程が必要で,これには多くの手間を要する.またこうして研削されたねじ溝の断面形状は,ねじ溝のねじれによる砥石の干渉で,目的のねじ溝形状とは一致しない.これらの難点は,ボールねじの加工に総形研削を用いることに起因している. 本研究は,総形研削によらずにボールねじを加工する方法の開発を行ったものである.研削されるゴシックアーチとは形状が本質的に異なる普通形状砥石を用い,コンピュータ支援により砥石軸を最適に設定することで高い近似精度のボールねじを研削が可能とするものである.コンピュータ支援により決定された最適な砥石軸角に基づいてボールねじの研削が行われる.本研究によって得られた成果は以下の通りである. (1)砥石軸を垂直面内の傾き角および水平面内の旋回角からなる三次元に設定することにより,普通形状砥石の使用によるゴシックアーチ断面ボールねじの創成が可能であることが,コンピュータ支援結果および創成されたボールねじの精度検定結果の双方から確認された. (2)以上の方法では,対向する二つの溝面を別工程で研削する必要があるが,この問題を解決するため,砥石軸を垂直面内の傾き角のみにより二次元に設定する方式が開発され,これが可能であることが,コンピュータ支援結果および創成されたボールねじの精度検定結果の双方から確認された. (3)さらに,ねじ軸方向の切り込みを行わずに,対向する二つの溝面を一工程で研削することも可能であることがわかった.
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