研究概要 |
ダイヤモンドの気相成長法として,高速合成に適したアーク放電プラズマジェットCVD法を選択した.しかし,これまでの装置では膜厚や膜質の不均一なダイヤモンドができやすいという欠点がある.そこで,電離気体であるプラズマが磁場の影響を受けることを利用し,磁場でプラズマの状態を制御することを試みた.そして,同法に磁場を援用した場合に得られるダイヤモンドがどのように変化するかを検討することを目的に,磁場を印加できるアーク放電プラズマジェットCVD装置を設計,試作した.メタン,水素およびアルゴンガスの3種の混合ガスにより生成されるプラズマジェットに磁場を印加した結果,プラズマジェット径が増加し,得られるダイヤモンドの膜厚分布や膜質分布が均一化されることを明らかにした. つぎに,透明ダイヤモンドを得るための合成条件について検討した.その結果,合成初期の核発生密度によらず,メタン濃度を1%以下とすることで,高光透過性のダイヤモンドが得られることがわかった.このダイヤモンドをダイヤモンド砥石で研磨したのち,赤外分光分析した結果,波長10μmで約68%と天然ダイヤモンドに匹敵する光学特性を有し,X線回折により特定の結晶方位をもたない多結晶体であることを明らかにした.また,断面の結晶組織観察より,低メタン濃度で得られるダイヤモンド膜は,高メタン濃度のものに比べて欠陥や不純物の少ないことがわかった.この透明ダイヤモンド得られる条件で膜厚の大きいものを合成するには数十時間を要するため,装置には長時間安定したプラズマジェットを発生できることが必要である.
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