研究概要 |
本研究は,マイクロマシンに代表される微小な機械要素の部分に多く用いられているシリコン単結晶を対象としてそのマイクロトライボロジー特性を明らかにすることを目的に実施された.本研究においては,表面の硬さ(超微小硬さ)に注目し,シリコン単結晶表面の微小硬さ測定を行った.従来から行われている硬さ試験で表面および表面近傍を評価するためには,圧子の押込みにより形成されたくぼみ深さが非常に微小なために硬さ評価が困難である.そのために本研究においては,圧子の押込み過程をも考慮に入れた動的硬さを測定することによって押込み荷重と押込み深さとの関係を求め,硬さの評価を行った.また,将来的に各種環境下でのマイクロマシンの使用を想定し,特に高温度領域における動的微小硬さ特性についても合わせて明かにした.本試験で用いた試料はプラズマCVD法によりシリコンウエーハ上に酸化膜(SiO_2膜)を成膜したもの(酸化膜厚さ:988nm)と自然に酸化させたものとの2種類である.圧子は押込み荷重が微小になると,圧子先端の形状が硬さ値に影響を及ぼすと考え,本試験ではダイヤモンド製の三角すい圧子(稜間角度:115°)を使用した.常温の動的微小硬さ試験においては,押込み荷重を4段階,荷重負荷速度を2段階変化させて試験を行った.また,高温動的微小硬さ試験においては,環境温度を常温から800℃までの17段階に設定し,押込み荷重を3段階変化させて試験を行った.この結果,以下のことが明らかとなった.1)常温の場合,酸化膜を有する場合の方が動的硬さの値は小さい.2)動的硬さ値は押込み荷重が小さくなるに従って大きな値を,また,低負荷速度になるに従って小さな値を示す.3)高温度領域の場合,300から400℃の間で極大値を示し,その後硬さ値は減少する.
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