研究概要 |
新機能性材料として様々な工業分野における応用が期待されているmmオーダ粒径の固体球殻に着目し,気-液-液系の界面流動現象および相転移流動を利用する方法を用い,高品質固体球殻の経済的な大量生産技術に関する基礎データの蓄積を目的とし研究を行った.また,固体球殻の生成頻度向上技術に関し,固体球殻の生成実験および数値解析の両面から球殻生成装置の設計に関する有用な資料を蓄積した.さらに,金属を用いた固体球殻の連続生成実験を初めて行い,金属球殻生成技術に関する有用な資料の蓄積を図った.まず,詳細に実験観察を行い金属球殻の生成に成功するとともに生成に関する特徴を明らかにした.以下に得たる知見を要約して示す.(1)新しい固体球殻生成装置を設計試作し,生成頻度を従来のものより著しく向上させることに成功した.(2)液体の物性値に関する各種無次元パラメータが不混和上下二液層の自然対流におよぼす影響について数値解析を行い,その影響を定量的に明らかにした.一般に下層液体のグラスホフ数が大きいほど,上層液体のグラスホフ数およびプラントル数が小さいほど上層液体中で大きな温度差を持ち,固体球殻の生成に好適であることがわかった.(3)対流制御板が不混和上下二液層の自然対流におよぼす影響について数値解析を行った.対流抑制板を挿入することが装置内の流動が弱まり,内部の温度分布は熱伝導状態に漸近する事が明らかになった.また,対流抑制板の挿入により,装置内部において任意かつ精密な温度分布の実現が可能となることを示唆した.(4)熱流動場解析に基づき,固体球殻生成に好適な装置の縦横比等の設計指針を提示した.(5)金属を用いた固体球殻の生成実験を行い,気-液-液系生成装置を用いた金属球殻の連続生成が可能であることを初めて明らかにした.(6)実験観察を詳細に行い,金属の複合噴流,中空液滴形成および生成された固体球殻の特徴を明らかにし,その分類を行った.(7)連続生成された固体球殻の平均径,変形率,肉厚および生成頻度を測定し,実験式を提示した.
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