研究概要 |
懸垂された燃料液滴を,瞬時に高温電気炉の中に挿入してその着火時間を調べる実験を,高圧容器の中で行った.燃料として,ヘプタン,オクタン,デカン,ヘキサデカン,液滴径は0.3-1.5mm,電気炉温は950K,圧力はそれぞれの液体燃料の臨界圧力を越えるまで行った.液滴の振動を回避するため,炉の方を移動したが,その速度は大きくとも小さくとも誤差が大きく,適度の速度があることが分かり,液滴が炉の入り口に到達して所定の場所に至るまでの時間は,約70msecであった. 非揮発性の燃料の場合は,一般的に,液滴径が大きくなるに従い着火時間も大きくなる傾向にある.加熱に要する時間が延びるからと解釈される.しかし,揮発性燃料の場合は,液滴径が小さくなると着火時間は大きくなった.質量流束が大きくなって,反応時間が長く必要になるためである.したがって,条件が整えば,着火時間に最小値ができる場合が生じる.しかし,圧力が増大すると,この傾向はなくなる傾向があり,単調な変化となる.なお,着火前に液滴が蒸発消滅する着火限界は広がる.すなわち限界初期直径は小さくなる傾向になる. 各燃料の臨界圧近傍における着火時間の変化を調べたところ,燃焼速度定数のような特異性は現れず,単調な変化となった.臨界圧近傍における種々の物性値の著しい変化に伴って,熱と物質の移動現象の一つとしての燃焼現象が支配されているはずであるが,燃焼の場合と異なり,液滴表面温度は臨界温度よりかなり低い温度であることが予想され,そのため臨界条件から程遠い条件になっているためと考えられる. 上記の結果を基に,7個の液滴からなる液滴列の端の液滴に着火し,もう一方の端の液滴までの燃え拡がる速度に関する実験を行った.液滴間隔が大きくなっても小さくなっても,燃え拡がり速度は小さくなり,最大の速度を持つ間隔が存在した.間隔が大きい場合は,火災が届き難いことで説明できるが,小さくなった場合は,火災が次の液滴が近すぎて前の液滴火災を冷却することによると説明した.圧力を上げると,圧力と共に急速に燃え拡がり速度は小さくなり,臨界圧を越えてまで燃え拡がりが存在することがなかった.火災の直径が圧力と共に急速に小さくなることに起因すると結論した.
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