研究概要 |
昆虫の飛行と航空機の飛行は流体力学上の異なるメカニズムによるもので,航空機はレイノルズ数の大きな領域で支配的な揚力を利用しているのに対して,昆虫は羽ばたくことによる抗力を主に利用しているといわれている.高速度カメラによる解析では蝶の羽ばたきのメカニズムを筋肉による翼の制御のレベルでは解析できないが,翅の弾性的な変形によって,鉛直上向き方向の力が生まれていることがわかった. 平成6年度はチョウの定常飛行について高速度カメラで撮影して解析したが,平成7年度は飛び立つときの飛行を解析した.この理由は,定常飛行では体軸が水平のまわりで振動し,翼のアップストロークとダウンストロークでは非対象な上下振動を繰り返すので,工学的に実現するのが困難である。これに対して飛び立つときの飛行では体軸は垂直のまわりで振動し,翼のアップストロークとダウンストロークは対象な動きをするので,実現が比較的容易と考えられる. 次に,翼を試作した.パラメータとして翼の弾性,アスペクト比,質量分布などをとり,パラメータを変化させて上昇力を計測して,最適な翼形状を実験的に求めた.翼を動かすアクチュエータは,軽量なものが必要で,空気圧を利用したアクチュエータを試作した.この弾性変形する翼と空気圧アクチュエータを組み合わせて,垂直軸まわりに拘束されてはいるものの飛び立つ飛行が確認できた.今後は姿勢制御まで考えた3次元のフリーフライトをめざしたい.
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