研究概要 |
パルスレーザー照射で生成されたSiアブレーション粒子は適当な圧力の希ガス中で冷却されクラスター(ここでは原子数2から10個程のものとする)化し,最終的にはSiナノクラスター(ここでは原子数が10〜105個;サイズが0.5〜10nmのものとする)に成長する.この動的機構を明らかにするために,主に時間・空間分解型のレーザープラズマ軟X線吸収分光法を用いて追跡した.さらに生成されたSiナノクラスターの堆積薄膜の室温での光ルミネッセンスとその最適条件を詳細に調べた.その結果として以下のような主要な結果を得た. (1)まず,クラスター形成過程の動的機構を時間分解発光粒子二次元分布・分光測定によって,0nsから1msまでの広い時間範囲で調べ,アブレーション粒子の時間変化を追跡し,アブレーション粒子の発光がガス圧が高いほど長い時間持続すること,即ち励起状態がmsのオーダーまで観測されることが分かった. (2)さらにSiとSiCのレーザーアブレーションプルームに同期をとったパルス希ガスの吹き付けによってクラスター化を促進させ,クラスター生成の動的機構を0nsから15μsまでの広い時間範囲で時間分解レーザープラズマ軟X線吸収分光によって調べた.この結果から,この時間領域においてSiのレーザーアブレーションでは主にSi^+が,またSiCではSi原子が見られた.しかし,Siクラスターで期待される新しい吸収線が現れていないことが判明した.したがって,顕著なクラスター化はこれより更に遅い時間領域で起こっており,恐らく15μsと350μsの間で観測されると予想できる. (3)希ガス中でのSiのレーザーアブレーションで生成されるナノクラスターをシリコン基板上に堆積し,水素処理と自然酸化の二つのプロセスをFTIRとPL(フォトルミネッセンス)測定により調べた.その結果,可視発光のためにはSiナノクラスターの核とその周りのSiO_2膜が必要であることを明らかにした.
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