研究概要 |
本研究では,ウエーファ全体を一遍にしかも極めて浅いpn接合を形成する新しいド-ピング技術の開発とドーパント濃度分布のモデリングを目的として研究を行なった。具体的には,超高真空中でのドーパント源の堆積と急速加熱による浅いpn接合形成を試みた。超高真空プロセスにおいては,シリコン表面の清浄化技術が重要であり,まず各種の基板洗浄処理法に対してRHEEDおよびSIMSを用いて表面状態,汚染状態を評価した。この結果,硫酸系処理による保護酸化膜の形成と真空中加熱による酸化膜除去の組み合わせが有効であることを見いだした。続いて,本ド-ピング技術の詳細な調査とドーパント分布のモデリングを行なった。熱分解により堆積させたボロン元素単体薄膜を拡散源とし,瞬間熱拡散法により各種条件によるシリコンへのボロン拡散特性を詳細に調べた。シリコン表面の清浄,拡散源の堆積,拡散プロセスは,超高真空チャンバー内において連続的に行なった。900C、20秒の瞬間熱拡散において、B薄膜の堆積時間を6sから1800sまで変化させることにより、シート抵抗を2×10^7から5×10^3Ω/□の広範囲で変化させることができた。この際,表面濃度を10^<18>から2×10^<20>cm^<-3>まで,接合の深さを20から40nmと精細に制御することができた。続いて点欠陥に基づいたドーパント濃度分布の計算機によるモデリングを行なった。シリコン中のドーパントは,ドーパント単独ではなく,ドーパント一点欠陥(空格子点)複合体を形成して拡散すると言うモデルに基づき,計算機によりその濃度分布を求めた。ドナ不純物である燐に対して,濃度分布に見られるキンクやテイル等の特徴をモデル化することができた。今後は,酸化増速拡散現象などを説明するために空格子点だけでなく,格子間原子も考慮する必要があると思われる。
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