研究概要 |
本研究では,高架構造物音,すなわち高速道路周辺において構造的要素の振動によって生じる可聴周波数域の騒音に対し,その発生機構を解明し,有効な対策を見いだすことを目標として以下の項目について検討を行った. 1.鋼桁の音響放射特性のモデル解析:これまで述べたように,高架構造物音と桁の構造に関係がみられることから,まず鋼I桁のウェブ部分からの音響放射特性を,単純化したモデル解析によって考察し,高架構造物音の性質や特徴との関連において考察する. 2.鋼桁の振動特性の境界要素解析:鋼I桁のウェブ部分の振動特性について,境界要素法を用いて桁をモデル化し,詳細な解析を行う.その結果から,高架構造物音と桁の構造との関連性についてさらに検討を加える. まず,1.の結果から,鋼I桁をモデル化した無限長弾性帯板の音響放射特性は,高架構造物音と共通した特徴を有しており,高架構造物音の発生原因が鋼I桁である可能性が非常に高いことが示唆された.また,2.の結果から,鋼I桁のウエブの振動については500Hz付近では面外振動が卓越することが分かった.さらに,ウエブが面内加振に近い状態であっても面外振動モードが卓越して生じることが明らかとなり,鋼I桁のウエブが高架構造物音に特に大きくかかわっていることが示唆された. 以上の成果から,鋼I桁が高架構造物音の主因であることはほぼ明らかである.実際の桁の加振状態の解明など,さらに研究を要する部分は多い.しかし,本研究の成果から,対策の基本的な考え方を示すれことが出来る.
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