研究概要 |
〈析出物界面の原子構造〉 Ti-7mass%Cr合金のbccβ母相からのhcpα相析出において,高分解能電顕を用いて析出物界面の原子構造を観察した結果,1)母相/析出相界面は半整合であり,変態に際して格子位置の対応が存在する.成長界面には変態転位と同様の性質を持つ原子レベルでのステップが配列していること,2)変態歪の体積成分はsessileなミスフィット転位によって,せん断成分はglissileな界面転位によって緩和されていること,が明らかとなった. また,同一合金の粒界α相析出についても隣接する両側のβ母相に対して半整合界面が形成され,表面起伏も発現することが明らかとなった. 一方,Al-15Ag(mass%)合金のfccα相からのhcpγ'相析出においても,母相/析出界面はやはり半整合であり格子位置の対応が存在するが,変態に際して生じるせん断歪は異なる種類の変態転位が活動する自己緩和機構によって緩和されていることがわかった. 〈マルテンサイトおよびベイナイト変態における界面構造〉 二種類のマルテンサイト変態(Ti-5mass%Crのbccβ→hcpα'およびFe-23Ni-4Mn(mass%)合金のfccγ→bccα'変態)において,母相/生成相界面の電顕観察を行った結果,1)マルテンサイトの界面は半整合であり,変態には拡散を伴わないため母相/生成相間で原子そのものの対応が存在すること,2)変態歪はマルテンサイトの格子不変変形および母相の塑性変形によって緩和され,界面構造は完全にglissileであること,が明らかとなった. さらに,鉄鋼のベイナイト変態は,侵入型溶質原子である炭素の拡散は伴うが,置換型原子は拡散せずにマルテンサイト変態と同様に剪断的な格子変化が起こる変態であり,その界面はミスフィット転位を含まないglissileな構造を持つことを提唱した.
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