研究概要 |
1.目的 異種の金属を原子単位で交互に規則的に積層した「金属人工格子」は,通常,分子線エピタキシ-・スパッタリング等の物理気相成長法により作製され,新機能材料の創製あるいは新物質探索を目指して研究開発が世界的にも急速に進展している。特に,磁性人工格子においては垂直磁気異方性や巨大磁気抵抗効果等応用に結び付く新しい現象が見いだされ、その発現機構と積層構造に関する原子レベルの解析と制御が要望されている。本研究は,常温・常圧で行える液相からの金属相形成法である「電析」による磁性人工格子の作製を目指すものである。 2.方法・結果および考察 本年度は,特に,垂直磁化Co/Pt,巨大磁気抵抗Co/Cu人工格子の電析による作製を主要な研究目標にした。反射電子顕微鏡観察による解析結果を基に,電析Co, Cu/Pt(111)超薄膜の結晶成長機構に関して検討し,単原子層レベルでの積層構造制御の基礎データを得た。電位制御条件下においてCo/Pt, Co/Cu多層膜を作製し,断面透過電子顕微鏡観察,X線回析ならびにオージェ・光電子分光法により組成周期・積層界面構造を評価した。作製された多層膜は厳密には組成変調合金膜ではあるが,人工周期構造がほぼ全体に均一に存在し,その構造は電析電位に依存した。また,振動試料型磁力計を用いた室温における磁化曲線ならびに膜面内方向の電流に対する磁気抵抗測定の結果,その磁化特性は面内磁気異方性を示すものの積層構造に依存しており,Co/Cu(111)テクスチュア構造においては20%以上の“巨大"磁気抵抗値が観測された。電析条件を厳密に制御することにより従来の気相成長法に劣らないあるいはより特異な構造・機能を有した磁性人工格子に成り得るものであると考えられる。
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