研究概要 |
本年度は、並行分散システムの有望なモデルである並行書き換えモデルに関し、その一つの重要な部分モデルとして、非同期メッセージ通信を用いた並行オブジェクト計算に対応するものを取り上げ、以下のことを行なった。 (1)抽象機械として定式化。 (2)抽象機械のその性能を評価するためのシミュレーション実験。 抽象機械としては、超並行計算機上で効率良く実装できるように、非同期メッセージ通信を用いた並行オブジェクト計算に近いものを想定し、並行グラフ簡約とメッセージ通信を併用した実行方式を想定して定式化した。 上記抽象機械のシミュレーターを、関数型プログラミング言語Haskellで実現した。このシミュレータ上で、抽象機械の仮想機械語によって記述した並行計算に関するいくつかの例題を実行し、結果次のような知見を得た。 (a)従来アドホックな形で実装されていた並行オブジェクト指向言語の,書き換えにもとづく形式的な実行方式を得ることができた.実際に,定義した抽象機械がの正当性(並行オブジェクト指向言語の正しい実装となっていること)は書き換え論理を用いて証明することができた. (b)シミュレータを使った実験を通して,本研究で定式化した抽象機械が,並行計算機を用いて効率良く実装できることを確認した. これをもとに、次年度以降は(1)超並列計算機上への抽象機械の効率の良い実装方式,および(2)本定式化にもとづく,並行オブジェクト指向言語のプログラム変換や部分計算手法の研究を行なう予定である。
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