研究概要 |
本研究は,1993年7月12日北海道南西沖地震(M7.8)の余震群を対象とした大学共同(北大・理,東大・地震研究所,京大・防災研究所)強震動観測から始まっている.合計8観測点によって,8月8日の最大余震を含む多くのデータが得られた.これらのデータの初期解析から,以下に述べる2観測点の強震動記録が,特異なものであることが判明した.その要因を明らかにすることを目的として,2年間にわたる科学研究費補助金による研究が行われ,強震記録の特性の抽出,観測点近傍の地盤構造調査(ボーリング調査,PS検層,微動探査,電気探査),地震のアレイ観測等から,以下の成果を得た. (1)8月8日の最大余震(M6.3)で1.6gという大加速度を観測した鮪の岬.ここでの強震動は,約4Hzで数十倍という鋭いピークを有する特異なサイトレスポンスを示す.その要因は,岬を形成する安山岩の上に存在する軟弱な段丘堆積物(厚さ=8.6m;N値<10;Vs=100〜200m/s)による強い増幅効果に加えて,地盤と建物との相互作用効果によるものである. (2)北海道南西沖地震時に液状化を起こした上ノ国.ここでの強震動は,周波数約1Hzで約10倍の増幅,10Hz以上で逆に減衰という特異なサイトレスポンスを示す.その要因は,厚さ67mの軟弱な堆積層(上部約50mにおいては,N値<10;Vs=100〜200m/s,Q〜30)による低周波数(〜1Hz)における増幅と高周波数(>10Hz)における減衰効果に加えて,盆地構造による2次的な表面波の励起によるものである. 上述の特異な強震動を観測した地点の地学環境は,日本の多くの地点で見られるものであり,今後,同様な地学環境を有する地点での地震応答を考える上で,われわれの成果はきわめて重要となる.
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