研究概要 |
本研究の目的は,鉄・マンガン水酸化物と水溶液間の希土類元素の分配係数を実験的に決定することによって,(i)天然水におけるランタニドとYおよびScの分別は,鉄・マンガン水酸化物と天然水との平衡分配反応に規制されながら起っていることを示し,(ii)この分配係数を4f電子数の関数として考察することによって,分配係数に反映されているテトラド効果,溶液および沈澱におけるランタニドイオンシリーズ内での配位状態の変化を識別することである。この為に,常温付近の温度条件下で,REE(Y,Scを含む)を添加したNacl溶液から鉄・マンガン水酸化物沈澱物を生成させ,pHの測定の後,溶液とその沈澱物を分離し,両相のREE濃度を測定することによって,分配係数の実験値を求める方法を確立した。10個の実験試料を恒温下で同時に攪拌する恒温攪拌装置を製作するとともに,超音波ネブライザーをICP発光分析計に接続することによって,REE測定の定量下限を従来の十分の一程度に改善することが出来るようになった。(i),(ii)の目的に関してはほぼ想定した成果が得られた。弱酸性条件下で見られる分配係数の上に凸なテトラド効果は,鉄・マンガン水酸化物と共沈するランタニドイオンのラカ-係数が,水和ランタニドイオンのラカ-係数よりかなり小さいことによる。更に,分配係数には,水和ランタニドイオンにおける構造変化とともに,沈澱物中の重希土類元素イオン(Tm,Yb,Lu)の配位状態の異常も反映されていることが判った。
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