研究概要 |
1.イソプロピル基を保護基とする五環系ラダーポリシラン(anti, anti, anti-ペンタシクロ[6. 4. 0. 0^<2, 7>. 0^<3, 6>. 0^<9, 12>]ドデカシランを創製しX線結晶構造解析で構造を定めた。このものでは、炭素類似体(ラダラン)の屏風形構造とは対照的に各四員環は折れ曲がり骨格全体がねじれ構造をとっている。これはケイ素-ケイ素骨格の柔軟さと置換基の立体効果に起因すると考えられる。2.ビシクロ[2. 2. 0]ヘキサシランをPdCl_2 (PhCN) _2と反応させると、ケイ素-ケイ素中結合が選択的に開裂して1, 4-ビシクロヘキサシランが生成する。3.ビシクロ[2. 2. 0]ヘキサシランの過安息酸(MCPBA)による酸化では、7-オキサビシクロ[2. 2. 0]ヘプタシランが生成するが、このものはビシクロ[2. 2. 0]ヘキサシランにくらべて強い紫外光吸収や蛍光発光を示す。したがって、ラダーポリシランの中結合に酸素原子を導入すると、酸素のn軌道とケイ素-ケイ素σ結合性軌道との共役に起因して、骨格の電子的性質を変化できることがわかった。4. anti-トリシクロ[4. 2. 0. 0^<2, 5>]オクタシランとPdCl_2 (PhCN) _2との反応によって、ドデカイソプロピルビシクロ[3. 3. 0]オクタシランとドデカイソプルピルビシクロ[4. 2. 0]オクタシランなどの新規ビシクロオクタシランを得た。5.オクタシラキュバンの開環ハロゲンでは、骨格転位が起こり多面体ポリシランである4, 8-ジハロテトラシクロ[3. 3. 0. 0^<2, 7>. 0^<3, 6>]オクタシランが生成した。なお、この多面体ポリシランとナトリウムとの反応は、オクタシラキュバンを与える。6.オクタシラキュバンのジメチルスルホキシドを酸化剤とする光部分酸化によって、新規含酸素多面体ポリシランであるオキサオクタシラホモキュバンとジオキサオクタシラビスホモキュバンを得ることができた。7.ジクロロジーtert-ブチルシランとリチウムとの反応から、ヘプターtert-ブチルシクロテトラシランと1, 1, 2, 3, 3, 4-ヘキサ-tert-ブチルシクロテトラシランを得ることができた。したがって、連結型多四員環ポリシランを誘導する研究の展開が可能となった。
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