研究概要 |
ヒドロキシ化合物とホウ酸エステルを生成し基質の一方の面を覆うことにより反応の立体制御が行える有機ホウ素化合物,6,8-ジフェニル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-オキサ-1-ボラナフタレンを設計・合成した。そして,この化合物およびその類縁体が,環状アルコール化合物の立体識別能を持つことを見いだした。例えば,遊離の3位水酸基を有する2-デオキシリボフラノシドにホウ素化合物を添加すると,糖のβ体と優先的にエステルを生成することがわかった。次いで,上記のホウ素化合物を用いてホウ酸エステルを生成することにより,β-ヒドロキシケトン化合物のsyn-選択的還元反応が可能であることを見いだした。また,環状の3-ヒドロキシ-1-シクロペンタノンでも,高選択的にcis-ジオールが得られることがわかった。 分子内に反応基質をホウ酸エステルとして捕捉できる不斉光増感剤,ジシアノフェニルメントールを設計・合成した。ホウ酸エステルを経由する不斉光増感反応を行うための基礎研究として,この不斉光増感剤に反応基質を共有結合により導入しジアステレオ選択的な光増感反応について検討を行った。その結果,この不斉光増感剤と3,3-ジフェニル-2-プロペン-1-オールとの炭酸エステルのオレフィン部位へのanti-Markovnikov型メタノール付加反応がジアステレオ選択的に進行することがわかった。さらに不斉光増感剤のクロトン酸エステルのクロトン酸部位への分子間光増感アミノメチル化反応もジアステレオ選択的に進行することがわかった。またこれらの研究の際,増感剤上にメチル基を導入することにより、増感反応の効率が大きく向上するという興味深い現象を見出した。これにより光電子移動反応に効率の良い一般的な手法を提供することができた。
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