研究概要 |
化学工業技術に於いて,酸化反応は還元反応に比べ解決されるべき種々の問題が多く残されている.その一つとして,ベンゼンの酸化やメタンのカップリング反応に見られるように,生成効率の低さがあげられる.これらは,酸化剤としての酸素活性の低さが原因である.そこで我々は,限定された活性酸素を気相に存在させ気質との反応を起こさせることにより,高生成率の酸化反応を達成できると考えた.その為の手法として,固体燃料電池で用いられている固体電解質(イットリア安定化ジルコニア略YSZ)と空間電極の組み合わせを考えた.すなわち,YSZを移動した活性酸素(負電荷酸素O^<2->)を空間電極を正極とすることで,負電荷酸素を空間に引き出すことを考え,実験的に検証したところYSZと空間電極間に電流が観測された.続いて,両電極間に生じる電流の根源を確かめるべく,負イオン用質量分析器(Q-MASS)を用い,電流物質の質量同定を行った.実験条件としてはQ-MASS系内を10^<-3>Paに保存し,ヒーター温度を450℃に設定する.YSZ電極(-)と空間電極間(+)に200Vを印加し,SEM後段4kVにてオシロスコープ上でパルスを観測する.観測されたパルスと質量数の相関を調べた. 実験結果から,空間で確認された電流には,電子と負電荷酸素原子(O)が存在することがわかった.固体電解質と空間電極の簡単な組み合わせで負電荷酸素原子が生成できることが確認されたことで,今後,従来法に代えて,種々の酸化反応が開発されることを期待したい.
|