研究概要 |
本研究の第一の目的はシリコン表面の単分子層処理であり、これを実現させた。水素終端されたシリコン表面という、一般に半導体プロセスで用いられている表面を出発点としてシリコン表面の単原子層窒化,硫化,酸化を行った。さらに、これらの処理後表面を土台としてアルコールなどを付加して分子修飾する可能性を探索した。XPS測定を用いて処理過程,表面構成化学種の同定を行ったところ、窒化,硫化,酸化処理とも単原子層処理を実現する条件を見い出し、単分子層形成過程を明らかにした。 次に、この単原子層窒化処理した基板上と水素終端基板上で同時にCVDによる成膜を行い、初期成膜の違いを観察した。チタンナイトライド,ガラス,ダイヤモンドを成膜させたときには、水素終端表面と単原子層窒化処理基板上で、核発生密度にして1桁程度の差がでて、タングステンの成膜では2桁程度の差が生じることを確認した。さらに、タングステンのCVD実験結果より成膜の初期段階では、シリコン表面の単原子層の水素が窒素に置き変わるだけでガラス上への成膜と同程度に成膜が抑制されることが明らかにされた。 さらに本研究では表面物性がCVDによる薄膜形成に及ぼす影響を検討するため、ナノメータ程度の平坦性をもつSi,MgO,Sapphire基板上にSiCを成膜して、その初期成長様式をAFM,XPS,SEMを用いて明らかにした。その結果いずれの基板上でも、表面荒さはいったん50Å程度まで上昇した後に十数Åまで減少するが、表面荒さが最大値をもつのは膜厚が数百Åに達したときであることがわかり、これらの結果を通じて、基板の物性が薄膜形成過程に及ぼす影響について検討を行った。
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