研究概要 |
本研究においては,日本産のイチイから培養細胞を誘導し,倍地中に僅かに分泌される目的生産物タキソ-ルを倍地から連続的に回収する一方,固定化の手法によって細胞を反応系内に保持し,長期間に渡って有効に利用するプロセスを提案し,その有用性について様々な角度から検討した。その結果,以下の知見が得られた。 1)日本産イチイ(Taxuscuspidata)カルスの誘導増殖条件を確立した。 2)カルスは液体懸濁培養において,倍地中へ著量のタキソ-ルを放出していることが示された。 3)ナイロンメッシュを用いた潅流培養を行い、タキソ-ルの連続生産を行った結果,希釈率を増加させることにより,タキソ-ルの比生産速度は増大し,回分培養の約10倍にまで達した。 4)アルギン酸カルシウム包括固定化細胞によるタキソ-ルの連続生産を長期間にわたり実施し,40日間に渡って,安定的にタキソ-ルを生産することに成功した。希釈率を増大させることにより,さらに,生産性の向上が期待できることが明らかとなった。 5)限外濾過膜ホロファイバーモジュールを用いたメンブレンバイオリアクター(MBR)システムを構築し,1000時間以上(43日間)に渡って,ゲル包括型固定化細胞とほぼ匹敵する安定的な生産を実現した。希釈率を3倍に増大させることにより,生産性は約22倍に向上した。 6)糖の種類,溶存酸素濃度などをシフトさせる2段階培養による効率的な生産の可能性も示唆された。 7)生産と分離の2つのサブシステムから構成されるタキソ-ル生産のためのトータルシステムを提案した。 8)有機溶媒による連続的な2段階抽出法がタキソ-ルの分離サブシステムとして有効であることが示された。
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