研究概要 |
本研究においてリチウム電池正極特性の優れたリチウムマンガン複合酸化物の新合成法,溶融含浸法を開発した。この溶融含浸法によるリチウムマンガン複合酸化物の生成プロセスについて検討し,電池特性の優れた材料が合成できる原因は原料のリチウムとマンガンの均一な混合ができることと溶融したリチウム塩と固体のマンガンの反応となるため接触面積が大きくなり低温でリチウムマンガン複酸化物の合成できることを明かとした。この方法は600℃以上の焼成により生成する化学量論組成スピネルLiMn_2O_4や非化学量論相成スピネルLi_XMn_2O_4の合成に有効なだけでなく、硝酸リチウムを用いると3V級活物質となるLi_<0.33>MnO_2の合成や低温焼成により生成する低結晶性スピネルLi_XMn_yO_4の合成にも有効な優れた合成法であることを明らかにした。これらの成果の一部既には電気化学誌,J.Power Source,J.Solid State Chem.誌に発表した。また,3V系正極活物質である熱処理MnO_2が低い電流密度で放電すると一部Mn(II)まで還元されることを見出し,更に高容量の熱処理MnO_2の合成可能なことを示した(J.Electrochem.Soc.)。 現在最も注目をあびているスピネル化合物についても重要な知見が得られた。従来化学量論組成のマンガンスピネルはサイクルを繰り返すと容量が減少するとされてきたが,この容量減少は不均一固相反応で充放電が進行する放電電圧4.2V(vs.Li)の高電圧放電部でのみ生じ,しかも50-100サイクル後には120mAh/gの容量を有する安定な構造の化合物に変化することを見出したことである。この結果は化学量論組成のマンガンスピネルがリチウムイオン電池正極剤として使用できることを示す画期的な発見であった。また非化学量論マンガンスピネルは110-120mAh/gと初期容量が幾分小さいがサイクルに伴う容量低下がなくこの化合物もリチウムイオン電池正極材料となることを示した。
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