研究概要 |
本研究はケイ素やスズなどの14核典型金属元素の分子内転位を活用して、1,3-双極子などの活性化学種を発生させる新規な手法を開発するとともに、それらの自己閉環やシクロ付加による複素環分子設計への応用を展開したものである。以下にその主な成果を要約する。 1)α-シリルイミンのシリル基の窒素への1,2-転位について詳細に検討し、α-スタニルおよびα-ゲルミルイミンではアジリジンに異性化しないことを明らかにし、シリル誘導体のみが転位することが分子軌道計算により予測できることも解明した。 2)上記の転位反応の中間体のアゾメチンイリドとフラーレンなどの広範な親双極子剤とのシクロ付加による複素環合成と展開し、中性条件下、脱金属化剤などを必要としない新規な1,3-双極子発生法として確立した。 3)本転位反応はスズ、ゲルマニウムにも適用可能で、その反応性は金属のルイス酸性とは異なりSn>Si>Geであった。最も温和な条件で進むα-スタニルイミンの場合、非安定化アゾメチンイリドの発生にも有効であるため、適用範囲の大巾な拡張が可能になった。 4)α-シリルアミドのシリル基の酸素への1,4-転位によるアゾメチンイリドの発生についても詳細に検討し、種々の親双極子剤とのシクロ付加による複素環合成を展開し、新しい1,3-双極子発生法として確立した。 5)イミンの脱プロトン化により調製したアザアリルアニオンとジフルオロシランの反応により、室温以下という温和な条件下でアゾメチンイリドが発生することを見出した。また、本法によって発生させた1,3-双極子と親双極子剤とのシクロ付加により、上記の熱転位によるものとは立体化学の逆転した生成物が得られることも明らかにした。この結果は分子軌道計算によって合理的に説明できることも解明した。
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