研究概要 |
報告者が発見したジベレリン(GA)を生産する新しい小房子嚢菌Phaeosphaeria sp.L487を用いて,GA_1をはじめとする重要なジベレリン類の発酵生産法,及び本菌におけるGA_1生合成とそれに関与する酵素等の研究を行い,次のような新たな知見等を得た. 1)初期増殖の遅い本菌の種菌培養法を改良すると共にジベレリン生産培地の成分等の検討を行い,単純なオートミール培地/坂口フラスコ振盪培養法により,本菌発見当初検出できなかったGA_1の生産量を200μg/mlに,さらに,その培養過程でのグルコース添加によってその量を300μg/mlに引き上げた.この培養で,菌類の野生株としては最初のGA_<20>とGA_<82>を単離し同定した.さらに,ファーマメディアーK_2HPO_4培地を用いた中性条件下での培養で,GA_9を15,GA_4を30μg/ml得た.一方,ジャーファーメンターを用いたジベレリンの生産法についても検討したが,坂口フラスコ培養に匹敵する生産量は得られなかった. 2)植物の生理活性型ジベレリンとして応用面でも期待されるGA_1の本菌における生合成経路は,合成標識ジベレリン等を用いる詳細な研究により,微生物では新しい植物類似の初期非水酸化生合成経路GA_<12>⇒GA_<15>⇒GA_<24>⇒GA_9⇒GA_4(⇒GA_<20>)⇒GA_1によることを解明した.本菌のGA_1は,GA_4とGA_<20>の両GAを経て生成するという大変興味深い知見が得られた.一方,本菌の菌体破砕ホモジネートから調製した超遠心上清液が,標識メバロン酸をカウレンに代謝変換することを明らかにし,本菌のカウレン合成酵素が植物等と同じ可溶性酵素であることを示した.しかし,そのGA類への変換等は確認できなかった.他方,分子生物学的な手法からの検討も進め,本菌の菌体からRNAを調製し,植物の遺伝子を参考にジレリンC_<20>酸化酵素等の遺伝子クローニングを検討している.
|