研究概要 |
セカンドメッセンジャーであるcAMPの細胞内濃度は,ATPよりcAMPを合成するアデニレートシクラーゼおよびcAMPを5′-AMPに分解するホスホジエステラーゼ(PDE)により調節されている.従来、各種PDE選択的阻害剤はあまり知られておらず、薬理作用の分離が極めて困難であった。PDEに対する特異的な阻害剤の開発はPDEのアイソザイムの機能や臓器特異性を知るうえで重要である.近年,cAMPと構造が類似しているグリゼオール酸類がPDE阻害剤として天然より見いだされ,その薬理作用が注目されている.本研究では、このグリゼオール酸の構造に学び、簡便に二環性糖部を持つヌクレオシドを合成するためにDiels-Alder反応を利用し,糖部にジエン構造を持つアデノシン誘導体とジエノフィルとの反応を行なった.目的とするα-endo付加体を得るために、超高圧下でのDiels-Alder反応を検討し立体および面選択性に与える影響を調べ、目的とする各種誘導体の合成法を確立した.以上のようにして合成した10種類の誘導体について、PDE-IIIに対する阻害活性を調べたが、これらには強い阻害活性は見い出されなかった.
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