研究概要 |
1. Ophiorrhiza pumilaの細胞培養に関する研究(1) Ophiorrhiza pumilaの培養細胞代謝産物の究明:チャボイナモリのカルスの成分を精査した結果カンプトテシン系アルカロイドの生成は認められず、代わりに原植物に含まれないアントラキノン類を多量に生産することがわかった。^1H-および^<13>C-NMR (1D, 2D)その他のスペクトル手法の応用により2種の新規物質(1-Hydroxy-2-hydroxymethyl-3-methoxy anthraquinone, 2-Butoxymethyll-1, 3-dihydroxy anthraquinone)を含む9種のアントラキノンの構造を明らかにすることが出来た。 (2) Ophiorrhiza pumilaカルスの分化誘導と再生植物代謝産物の究明:上記培養カルスをIAAおよびカイネチン添加培地で培養することにより分化を誘導することに成功、再生植物体を得た。その代謝産物を精査した結果、Camptothecin, 9-Methoxycamptothecin, Pumiloside, 3(R)-Deoxypumilosideを含有することがわかり、二次代謝産物生合成系が発現していることがわかった。 2.生合成経路に範をとるカンプトテシン系アルカロイド合成の試み:標記試みの一環として3-epi-Pumiloside tetraacetateのC-7位酸素官能基をエノールトリフレートを経て還元除去することに成功した。この際得られた生成物は予想された3-epi-Deoxypumilosideの誘導体ではなくDeoxypumiloside tetraacetateそのものに一致した。この結果以前提出していたC-3位の立体配置を訂正する必要があることがわかった。 3.新規カンプトテシン類の合成:10位に長鎖飽和脂肪酸エステルオキシ基を有するカンプトテシン類5種(C9, C11, C15, C17, C19)を合成した。現在各種エステラーゼに対する挙動、トポイソメラーゼI阻害活性を検討している。 4. Vernonia属植物Vernonia cinerea(ムラサキムカシヨモギ)およびV. arboreaの含有成分の研究:沖縄本島でVernonia cinereaを採集、含有成分の研究を試みたが、期待していたヘテロアニュラージエン系苦味ステロールは見出されなかった。タイに産する同属植物V. arboreaから既知物質3-O-Caffeoyl quinic acidとともに一新リグナンを見出し現在構造の解明を試みている。 5.その他の創薬資源植物の探索研究:亜熱帯圈の沖縄県琉球列島には東南アジアのフローラと共通種同属種が多い。一部タイ、マレーシア、インドネシアの研究者と協力してMorrinda属、Hedyotis属(Rubiaceae)、Glycosmis属、Murraya属(Rutaceae)、Acalypha属(Euphorbiaceae)等について資源植物開発に関する基礎研究を行っている。
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