研究概要 |
活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3、1)がその核受容体(VDR)にどのような立体構造で結合しているかを明らかにするため、1の配座解析、配座制御アナログの設計と合成、および受容体結合活性を検討した。 (1)1,25(OH)_2D_3(1)の側鎖の配座と受容体結合性の関係を検討するため、1とその20-エピ-アナログ(20-epi-1,25(OH)_2D_3、2)の側鎖立体配座を分子力場法を用いて解析し、結果を立体図で表わした。そして、1と2の側鎖が異なる立体領域を占めること、1と2の占める領域は更に2つの主領域に分かれることを明らかにし、各々の領域を1についてAとG、2についてEAとEGと命名した。そして、側鎖の可動領域が上記の4種の領域の1つのみに制限される活性型ビタミンDアナログ4種を設計した。(22R)-および(22S)-22-Me-1,25(OH)_2D_3(3および4)並びに(22R)-および(22S)-22-Me-20-epi-1,25(OH)_2D_3(5および6)である。 2)上記4種の側鎖配座制御アナログをステロイド側鎖共役エノンへのギルマン試薬の立体選択的付加反応を鍵反応として、各々立体選択的に合成した。 3)上記の4種の化合物の受容体(VDR)および血中のビタミンD輸送蛋白(DBP)に対する結合性を検討した。VDRに対する結合性は5、4、3、6の順であり、特に5は天然のホルモンである1,25(OH)_2D_3(1)の約20倍の活性を示した。DBPに対する結合性は4が1とほぼ同等であったが、他は全て弱かった。以上の結果からVDRおよびDBPに結合するとき、要求されるビタミンDの側鎖の立体構造が明らかになった。 4)ビタミンDがVDRに結合するときのA環の立体配座と1α位の水酸基の立体的要求を明らかにするため、1β-及び1α-アルキル置換活性型ビタミンDの配座解析と合成を検討し、1β-及び1α-Me-1,25(OH)_2D_3並びに1β-及び1α-Bu-1,25(OH)_2D_3その合成に成功した。これら化合物のVDR結合性を検討した結果、いずれの極めて低い活性を示し、特に1,25(OH)_2D_3の1β位にメチル基を導入しただけでVDR結合性はほとんど消失することが判明した。 5)活性に必要な1α位の水酸基を導入するとプロビタミンDが新しい光異性化反応を行うことを見い出し、更に1位の水酸基の立体化学と光異性化反応様式との関係を明らかにした。 6)ビタミンD-SO_2付加体を経由する、19フッ素かビタミンDの合成法を開発した。
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