研究概要 |
本研究の目的を達成するために導入された技術の改善と対象とした試料の分析と解析を通じて得られた成果は以下のようにまとめられる。なお。試料は本邦における中・後期更新世の間氷期海岸段丘に関係する堆積物中の軟体動物化石であり,太平洋岸では常磐海岸(塚原層),三浦半島(大津貝層,津久井貝層),日本海岸では男鹿半島(潟西層,安田層,鮪川層),能登半島(平床貝層)より採取した。常磐海岸産の試料のみ保存状態不良小ため分析不能であった。 1.アミノ酸分析装置のシステムが分析から出力まで(60分以内)ほぼ全自動式で完成した。前処理以外の行程については均質な再現性があり,作業者の違いによる分析誤差が除去された点で進歩した。 2.三浦半島と男鹿半島では,従来の推定年代を示唆するESR年代が得られた。しかし能登半島の平床貝層のESR年代は定説(12万年前)とは異なる20万年前を示し,地殻の垂直変動についての再検討が必要であることがわかった。 3.アミノ酸分析による相対年代の推定値はESR年代値を大方支持した。イソロイシンのラセミ化の解析は,最近20万年間では緯度的に北にある産地のほうが化石の続成過程における化学反応速度が遅く,また同地点では間氷期単位でみると一様としてよいことを解明した。これに基づくと,第四紀後期における男鹿半島-能登半島-三浦半島の気候環境は保存温度を指標にして同様の温度差環境が保持されてきたと考えられる。
|