配分額 *注記 |
8,100千円 (直接経費: 8,100千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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研究概要 |
本研究は、DNAの塩基配列に基づいて底生有孔虫の殻形態が持つ意味を分子生物学的見地から評価することを目的とする。研究は、有孔虫の殻の形態的な特徴と、その形態変更の実態を理解することと、DNA解析を行うことの2方向から解析を進めた。化石記録が豊富な有孔虫類の中から,形態解析を詳細に行ったGlabratella属とBolivina属のDNA解析を行った。有孔虫からのDNA抽出およびPCR法による増幅はPawlowske et al. (1995)の方法に従い,核のribosomal DNAのlarge subunitの約650塩基の増幅を行った。プライマーは,有孔虫に対して特有に働くspecific primerを用いたところ,極めて効率よく有孔虫のDNA断片を得ることが出来,かなり小さい個体からもDNAの抽出が可能になった。増幅したDNA断片はプラスミドベクターに導入してクローニングした後,シークエンサーを用いてシークエンシングを行った。 DNA解析を行った属グループ内の遺伝的変異は,固生群内での遺伝子の交流が頻繁に起こるような粗放的な生殖様式を持つAmmoniaやBolivina属は大きく,細胞質融合をして生殖を行うために遺伝子の交流が少ないGlabratella属は小さかった。塩基配列から節約法あるいはNJ法を用いて計算して求めた分子系統樹は,従来の形態分類とは異なる系統関係を描き出した。しかし,仮足の伸展を支持する機能を持つ口孔の周りのradial grooveなどのように機能的な意味を持った形態に注目して再分類を行うと,その結果は分子系統樹と整合的になった。一方、Glabratella opercularisの地域個体群の中には,従来の形態分類では区別できないが,遺伝的には種を越えた変異を個体群が存在する。以上の結果から,有孔虫の形質を機能形態的な側面に注目して見直すことによって,分子系統学の結果と整合的な形態分類ができるようになると結論する。
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