研究概要 |
本研究は、乾燥地の大きな地温変動に着目し、それが植物の成長におよぼす影響を、養水分の吸収、窒素同化、可溶性炭水化物産生及び植物ホルモン産生の面から総合的に解析しようとするものである。本研究の成果は次の通りである。 1.実験材料としてトマトを用い、幼植物を砂を詰めたポットに定植し、4台の異なる温度(気温、地温)制御下(気温(昼/夜、℃)/地温(昼/夜、℃) : (20/20) / (12/12), (25/15) / (16/08), (25/25) / (17/17), (30/20) / (30/20)あるいは気温一定で3台の異なる地温制御下(気温20℃,地温(昼/夜、℃) : (12/12), (16/08), (20/20))にある人口気象室内で成育させた。また培地の硝酸態窒素/アンモニア態窒素比は10: 0, 8: 2, 6: 4の3段階とした。 2.植物体の成長量、蒸散量、養分吸収量および窒素量は地温の上昇に依存して増大した。 3.茎内蒸散流の移動は地温の低下により阻害された。 4.木部液中の植物ホルモン(サイトカイニン、ジベレリン)の濃度は温度に依存して高い値を示した。 5.平均地温が同じでも12℃一定と昼16℃/夜8℃とを比べると、後者の場合の方が植物体の成長量、蒸散量、養分吸収量、窒素量および木部液のサイトカイニン、ジベレリン量は高い値を示した。 6.植物体の可溶性炭水化物量は、地温12℃一定で最も高い値を示した。 7.培地の硝酸態窒素/アンモニア態窒素比は、植物体の成長量には影響を及ぼさなかったが、体内のイオンバランスには影響を与えた。 8.窒素源が硝酸態窒素のみの場合、体内の有機窒素および硝酸イオンの蓄積も温度依存的に増加した。 9.以上のことから、低地温による地上部成長の抑制は、根における養水分吸収の阻害というよりも、むしろ根から地上部への養水分転流の減少に基ずくものと推察された。
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