研究分担者 |
槙原 寛 農林水産省森林総合研究所, 森林生物部昆虫生態研究室, 研究室長
岩田 隆太郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90213298)
張 培淦 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (90256834)
名取 正彦 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80059203)
大庭 喜八郎 筑波大学, 農林学系, 教授 (80176982)
池田 俊弥 森林総合研究所, 森林生物部, 森林動物科長
戸丸 信弘 筑波大学, 農林学系, 助手 (50241774)
内田 煌二 筑波大学, 農林学系, 講師 (10015670)
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研究概要 |
マツ類の枯損被害は依然としてわが国で最大の森林病虫害であり,病原のマツノザイセンチュウは北米からの侵入病害であることが明らかである。病原線虫に関してはマツノザイセンチュウ及び近縁種の世界的な分布,病原性,形態等の解析が交配実験やDNA解析等を通じて進み,材線虫種群間の地方変異性等の関係が明らかになりつつある。このような基礎的研究を基に原産地における抵抗性発現機構や天敵の働きが明らかになり,侵入地での防除に画期的な展開が期待できるようなった.これに対し,媒介昆虫,マツノマダラカミキリは日本の在来種で広く東アジアにも分布することは古くから知られているが,媒介昆虫としてマツ枯損防止に関わる生理生態的特性の地方変異性等はほとんど知られていない。効果的な枯損防除には媒介昆虫の各地域における生活史特性の把握が肝要である。被害は近隣諸国にも及び防除や被害拡大防止にはに国際的協力が必要な時代になった.各地域における本種の生理生態的な特徴や系統的な相互関係などを解明しておくことが重要となり,エステラーゼアイソザイムによる系統解析を,国内および30産地の成虫・幼虫を対象に行った.海外からは南京,広州,台湾産を森林総研で継代飼育中のものを用いた。国内産の間では形態的な差異はほとんど認められないが,海外産では前胸背の赤色紋が鮮明である。成長発育生理に関しては台湾産は非休眠性で,発育零点も極めて高い。国内でも北方産ほど有効積算温量は少なく,偏差が大きい。アイソザイムに関しては国内産と中国産とでザイモグラフパターンに明らかに差が認められた。国内産の間では明らかな差はないが,地域によっては特徴のあるパターンを示すものもあった。現在のわが国の地方個体群の分布は,長年にわたる人為的なマツ被害丸太の移動によって大幅に攪乱されて全国的に均質化していることを示すものと考えられる.邦産と中国・台湾産とは亜種相当の違いがあることを示唆している.
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