研究概要 |
水生生物胚および幼生の凍結耐性を比較した.シオミズツボワムシの単性生殖雌卵の凍結保存条件の検討を行い.液体窒素中に凍結保存後,解凍して,成熟・産卵個体を得ることに成功した.シオミズツボワムシ単性生殖卵の耐凍性は発生段階によって異なり,対称期の卵が最も耐凍性が高いことが明らかになった.ムラサキイガイのトロコフォア幼生の凍結保存を行い.液体窒素中に保存後に解凍して.ベリジャー幼生まで発生を進めることに成功した.液体窒素で凍結・融解後のタテジマフジツボのノウプリス幼生の活性は極めて低く,生き残ったもののごく一部が,発生を進めキプリス幼生を経て,付着個体となった.ノウプリウス幼生の凍結保存では,第1段階の凍結で十分な脱水を行うことが重要であった.ヒラメおよびマダイの受精卵を液体窒素中に凍結した場合,解凍後に発生を続け,孵化に至る卵は得られなかった.-20℃までの凍結では,耳胞形成期以後に凍結したヒラメ受精卵で、孵化仔魚が得られ凍結耐性が発生段階によって大きく異なることが明らかになった.耳胞形成期のマダイ受精卵では,-20℃に冷却し保持した場合,15分間で孵化仔魚は得られなくなった.上記の研究結果を総合して,胚および幼生の凍結耐性は,同種であっも,発生段階によって異なることが確認されたが,生物の種間で比較すると,より小型の生物ほど凍結保存が容易であった.また,本研究で用いた凍結方法を用いるものとすれば,胚あるいは幼生の凍結保存による,遺伝子バンクの作成は,0.3mmmサイズ以下の水生生物で可能であるものと考えられた
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